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百田尚樹《輝く夜》〜クリスマスイブに起きた、5つの素敵な物語〜2011-12-04

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2011-12-04

百田尚樹《輝く夜》
 〜クリスマスイブに起きた、5つの素敵な物語〜
               講談社文庫    476円+税



この本もまた、書店で偶然、手にしたのです。
この著者が『永遠の0(ゼロ)』を書いたひとだとは知りませんでした。
(この名作に関しては、また、いつかご紹介したいと思います。)

世の中にはいろんなひとがいて、
小説よりも奇なり、なんて劇的な日々を送る人がいるし、
そういうひとたちが次世代を創ってゆくのだろうなあ、などと
妬ましかったり、羨ましかったりします、
また、たいへんなんだろうなあと尊敬もします。

そういうひとたちの日常をちょっと切り取ってみたりすると、
おしゃれで、どきどきする小説が生まれたりするのかもしれません。
事実、小説の世界の男女の主人公達はそうでないと魅力的じゃないですよね、
特に若い主人公達は。

ところが、この『輝く夜』に出てくる主人公達は、
名前をもたないひとなんですよ。
いえ、たしかに名前を持ってはいますけれど、
もうひとりの私、あるいはもうひとりのあなた、なのかもしれないと思わせる、
寓話のなかの男性、あるいは女性みたいなんですよね。

だからこそ、クリスマスイブにはふさわしいのかもしれません。

5つの異なった人生に、作者は希望を見せてくれます。
それは必ずしもすべてが、
幸せな結末とは言いがたいものもあるのだけれど、
《幸せ》というものの定義にもよるかなと思います。
《幸せ》というものが、感情の動きを指すこともあるとするなら、
この5つのお話は間違いなく幸せな物語の宝箱だと思うのです。
そうだな、
アンデルセンの《マッチ売りの少女》。
あの少女も、かわいそうだったけれど、
でも、彼女自身は幸せでしたよね・・



ひとはどんなときに幸せと感じ、
また、不幸を乗り越えていけるのだろう、
こころを汚さず、自らの運命を受け入れていけるのだろう、
そういうことを、作者の百田さんが教えてくれたなと思いました。


この5つの短編のなかで、私は《ケーキ》という、
とても悲しいお話が好きなのですが、
百田さんも《あの話は僕も好きな作品です》って。
教えてくださいました。
悲しいお話だけど、どんな時でも人間は幸せになれる、
そのことを教えてくれるお話です。
こういうお話を書いてくださる百田さんが
とっても素敵なひとだなと思いました。


クリスマスを前に、
すこし時間があるときにおススメの一冊です。
年末に向けて忙しいなら、
過ぎたばかりのクリスマスに思いをはせて、
ぜひ読んでみてくださいね。







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