オーケンの小説集は、とっても魅力的で、
途中、血みどろ短編小説があっても、決して逃げないでください、なのです(笑)
(2011-02-23 )
大槻ケンヂ《ゴシック&ロリータ幻想劇場》
ほろほろと泣ける小説もあり、です
桜庭一樹さんで《GOSICK》シリーズがありますが、あれは合わなかった(汗)
どうも中途半端で、その時代に入れないし、登場人物も誰一人そそられなくて、
シリーズになってるのが、不思議でした。1作目でめげました。
あくまで個人的な印象ですが、
桜庭一樹さんという作家とちゃんと逢えていない感があって、残念です。
ってかおーい、大槻ケンヂさんなんですけれど。すみません。
大槻ケンヂ
《ゴシック&ロリータ幻想劇場》
(角川文庫)476円+税
出てくる少女とか女性がゴスロリファッションに身を包んでいる、
というお約束があるんですが、そのほかは自由設定。
なので、その小説の内容は多岐に及んでいます。
164分割に切り刻まないとゾンビ化しちゃう少女たちのお話は今回はなくて、残念^^
いや、最初は短編集に含まれていたんだけれども、《ステーシー》って本にお嫁に行って。
とあとがきに書いてありました。
オーケン、小説のあとがきで、ライブに来てくださいとお願いしてます、
こういうのがたまりません。オーケン、素敵。
たとえば、この短編集のなかには、
《妖精対弓道部》なんてのがありまして、
ゴスロリ着た空とぶ妖精さんと弓道部が矢をつがえ、血みどろになって戦うなんてことに。
これ、結末はグロいんですが、なんで妖精が戦いをしかけてきたかはわからないし、
なんで主人公が物語の結末を選ぶのかがわからないのです。
でも、主人公の選ぶ結末は相当にエロいです。高校生にこんな結末を選ばせるなんて、
犯罪級のエロというか、高校生でも爛れた女っぽい部分は持ってるのね、的な驚愕がありました(笑)
で、さすがミュージシャンじゃん。って思ったお話をひとつ。
短編集買うんだからねたばれはよしなさい、というひとはここでさようなら。
ひとつくらいお話ネタばれされてもいいわよ、というひとだけご一緒にどうぞ、です。
《新宿御苑》という小説。
主人公はボサノヴァを歌ってる女子ですが、夢破れて
北のふるさとに帰ろうと思って荷物を持っているわけです。
姪っ子へのお土産を買って地下鉄丸の内線入り口から階段を降りてゆくと、
元カレに出会うんですよ、10年ぶりに。
「これからツアーにでるの?オレは普通になっちゃったけど、おまえは
いまだに音楽やっててえらいなあ。時間があるなら近くの新宿御苑まで花見に行かないか」
二人で昔よく行った新宿御苑に行くわけですね。
元カレはその昔、パンクロッカーで、主人公はボサノヴァ歌い。
とあるフリマで向かい側になり、お互いのラジカセの音楽にけちをつけるわけです、
「そんなの音楽じゃねえ」ってことで。
でも、ふたりは恋しちゃうわけですね、青春はちっとばかしの趣味の違いくらい、目こぼしさせる。
主人公は傷つきやすくて、いろんなことがあるたびにもう歌をやめよう、とか思うわけです。
彼は「そんなボソボソ口先で喋ってるみたいなもんは歌と認めない。
歌ってのは怒りを表現するためにあるんだ!」とか言うし。
でも、主人公は「歌は聴いたそのひとにもうひとつの新しい生命をもたらすための優しいものなの!」と
思っていて、それを頼みに頑張るんだけど・・、
傷ついた主人公は10年前、彼に思い切って恋の告白をしたんです。
愛を、ついて行くって気持ちを。
ところが、うたた寝していた彼はそれをボサノヴァと聞き違いしてたんですよ。
「だって、ボサノヴァって喋ってるんだか歌ってるんだかわからないし、
あれー、いい歌だなあって思って聴いてた。じゃあ、俺達、勘違いで別れたのか」
だって、反応なかったら、主人公は振られたって思いますもんね。
・・主人公は思うわけです、
彼がそれを歌だと思い、その歌がもうひとつの命の(彼には奥さんと赤ちゃんがいる)
誕生のきっかけになったじゃないか、
ということは彼にとってのボサノヴァが人生を変えた、
自分にとっての歌の意味となったんだ・・って。
主人公はいろんな挫折や苦労からもう逃げたいと思っていたんだけれど、
歌い続けていれば、ひょっとしたら自分の歌が誰かに勘違いを起こさせ、
新しい命を生み出すきっかけにもなれるのかもしれない・・そう考えて、
ふるさと行きの切符を握りつぶすのです・・。
小説をそのまま読んでもらえばよかった、もっと感動するのに。と思いました、すみません。
しかしながら、
この小説には大槻ケンヂの音楽家としての魂もこもっているじゃないか、と思ったわけです。
しかも、主人公と元カレの両側面が。
だからね、これは音楽をやっているひとが小説を書いたからこそ、の必然が現れていると思ったわけで。
そして、その部分に、あんなギザギザを顔に入れててもね(笑)、大槻ケンヂのピュアを切実に
感じたわけですよ。
音楽にたいする希望というか、憧憬というかね。
たったひとつの小説をご紹介しましたけれど、感慨深い小説もあるんですよ。
ある日突然、女子高校生の母親が、ふだんはジャスコでしか服を買わないのに、
女子高校生とまったく同じのゴスロリファッションに身をつつむとか。
その話の種がわかると、電車の中で涙がとまんなくなりますよ、30歳代〜のひとはきっと。
ほとんどの小説は読んだあとからすぐ忘れそうなんですが←ちょ、ちょ待て。
でも、良いです、おススメです。
オーケンのゴスロリワールドをご堪能あれ。