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Channel: Lに捧げるちいさな図書館
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あこがれランキング《ぜったいL〜♪》258  2012-06-14  

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Lと花沢類の物語。2次創作です。BL要素を含んでいます。
ご興味ない方は華麗にスルー推奨。
(2012-06-14 )



あこがれランキング
《ぜったいL〜♪》258
     2012-06-14    


リビングに、というか、
家の中のどこかしこにも、雑誌が散乱してるんだけど。
気のせい?
じゃないよね。
だって、キッチンはおろか、
寝室にも、玄関にも、お風呂のなかにもだよ。
お風呂にはわざわざ防水加工を施してある雑誌が数冊。
雑誌にわざわざ防水加工を施すんです、彼は。
「雑誌、多すぎなんだけど。整理したらどう?」
「そうですか?」
Lはカフェボウルを両手で捧げ持って、
甘ったるい香りのするコーヒーらしきもの(もはやコーヒーとは呼びたくない)を
ごくごく美味そうに飲んでいる。
あー、うま。って顔をした。おやじじゃん、まるで。
「今、おやじみたいな顔、って思いましたね」
「えっ、思ってないよ」
どきっ。これだからLは侮れない。
「いや、相変わらず可愛いなあと思ったんだよ」
「当然です。変態の好みに合わせてあげましたから、今日も」
「たしかにね、不思議の国のアリス風で、アリスや兎やトランプが
アイスブルーのカットソーにプリントされているけれど、
でも、ことごとく全員がチョコを手にしてるぞ」
「気がつきましたか。そこがポイントです!」
Lが自分で買ってきたシャツなので、ちょっと予感はしたんだ。
限りなく透明に近いピンクのサブリナパンツの足首に、
銀のチェーンが巻きつけられてて、
よく見ると、そこにも銀色の板チョコが揺れてる。
「で、何なの?」
「鋭いですね」
「馬鹿にしてるだろ。スイーツ特集の雑誌をこれだけ撒かれて、
服やアクセまで板チョコだらけ、気付かないほうがおかしい」
「花沢類なんですよ」
「わるかったね。暇があったら昼寝してて昼行灯ですよ、僕は」
「褒めてますから」
「褒めてないだろ!」

Lはカフェボウルをテーブルに戻して、
椅子のうえにちょこんと、両膝を抱いて座りなおした。
生クリーム入れすぎのコーヒーもどきのせいで、
口のまわりはクリームだらけ。
思わず、ティッシュでぬぐってやる。
されるがままの君は可愛すぎる。
おやじから幼児へ。ほんと、変幻自在だな、Lは。
「あこがれランキング最新版です」
テーブルの雑誌の下から、紙っぺらを、親指と人差し指でつまんで、
Lは僕の目の前に掲げる。
仕事場に散乱している無味乾燥な書類とちがって、
いろんなスイーツの透かしめいたイラストまで入れてある《資料》。
「機密事項なんですよ。でも、仕方ありません、閲覧を許可します」
膝のうえにひじをついて、美しい細長い指であごを支えるL。
「あほ」
「ああああああ、花沢類にあほと言われました、世界の切り札のこの私が」
「元を忘れるな。だってランキングだというのに、上から下まで全部1番って書いてある」
「・・・・・」
可愛く人差し指をくわえても、あほであることには間違いない。
「ふんだ。もういいです」
僕の手から紙っきれを奪い返して、Lは立ち上がった。
「旅にでます」

「おい。ちょっと待て」
あわてて、Lの細っこい腕を引っ張る。
体勢を崩したその華奢なからだを両腕にうけとめて、
あらためてすっぽりと包んだ。
「わかった。行こう」
「は?」
「旅に出よう」
「明日朝に出て、月曜日に休みとるから、なんとか」
「急ですね」
「だって君をひとり旅になんかに行かせられない」
ぎゅーっと、腕にちからをこめた。
「一人旅くらいしますよ。平気です」
「平気じゃないんだ、僕が」
腕のなかでもじもじしながら、
「どこ行くんですか」
「どこでも」
「スイーツめぐりですよ」
「いいさ。それって君が一番行きたい旅だよね」
「だからひとりでも行けますよ」
「ジャマなのか、僕が」
「若干・・」
がびーーん。
よく言うじゃないか。
《なんでダンナと旅行しなくちゃならないのよ、
友達と行くわよ》
って、これは会社の先輩がこぼしたんだけど、
冗談だと思いたい、未婚の僕としては。
いや、事実婚の夫としては。
夫だよな、まあ、どうでもいいけど。
「あ、・・今のは不穏な発言でした。削除です」
「傷ついた」
一瞬、にたりと笑ったろ、笑ったな。
「じゃ、旅行の用意をしなくちゃです」
Lは猫背でスキップして部屋を出てった。

そうだよ。今からメールして、月曜日1日だけならなんとかなる。
なるだろう、ええっと・・・、

ぎゃっ、忘れてたーーー、やばい。
忘れてた。
月曜日は屋上で初めて貸し農園を開くクライアントのところに行って、
話をつめてくるんだった。
あー、忘れてた。というか、考えたくなかったんだ。
あそこ、担当者が複数いて、話がぐるぐるまわるから
すごく面倒なんだよな。
旅行どころの話じゃないぞ。
とりあえず、とりあえず、他の日にさせなきゃ。
と思ったら、
「はい、用意できました。完璧です」
Lがチュッパチャップスを手に満面の笑顔、なかなか見れないタイプの。
「早いね、もうすんだの」
「ええ。畑と八百屋さんの仕事を代わって貰う交渉しました。
13分かかりました。旅行は手ぶらでOKです。大人の旅行ですから」
「スイーツの準備は」
Lはちらりと半ばケーベツの目で僕を見た。
「あこがれランキングの旅って言いませんでしたっけ、私。
要するに食べ歩きなんですよ。なんで準備がいりますか」
「はは、はは。あのさあ。1週間のばさない?」
「え?」
「のばすとか無理?」
「無理です」
Lの両肩を抱き寄せようとしたんだけど、しっかり踏ん張りやがった、こいつ。
「にゃんとエスくんだって、アイバーに預かってもらうんですよ。
了解は取り付けましたから」
「は、はええ」
「私を誰だと思ってるんですか」
「でも、休めないんだよ、まじで。仕事の段取りを忘れてて」
「正真正銘のあほですね」
「だって、君をひとりで旅行なんかに行かせられるか!」
「じゃ、アイバーと一緒に行ってもいいですか。彼の好みは花沢類で
私ではありませんから」
「なんてことを。そんなこと言ってアイバーが手を出さないとでも
思ってるのか」
「そうでした。私、可愛いですから」
「いや、待て。旅行行くのならアイバーに猫たちを預けるんだろ」
「あ、気付きました? やりますね」
「よかった。でもひとりはやっぱり・・・」
「ならば、三堂さんに声をかけます。彼ならあこがれランキングに
喜んでお付き合いくださると思いますから」
「だめ!だめだめだめ! あいつは絶対だめ!わかったよ。
ひとりで行って来い。でもって、ちゃんと連絡は入れろよ」
全部、話を聞かずに、Lはまたもやスキップで出てった。
「あ、車出してくださいね。今から、アイバーのところに行きますから」
首だけ、ドアから出して、チュッパくわえたまま。
僕の不安な気持ちも知らないで。
なんてこった!

**************************



続きますが、長い目で見てやってください(爆)


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