《桐島、部活やめるってよ》
桐島に振り回される103分。いや、ほんとに。
2012-08-23
L三部作やGANTZで松山さんがタッグを組んだ、大恩人の佐藤P.
前々から小説の題名で気になっていた《桐島、部活やめるってよ》。
映画化は佐藤Pのお仕事!と聞いて、思わず、翌日の今日、
(たまたまお休みだったので)行ってまいりましたよ。
桐島に振り回される103分。いや、ほんとに。
何度も言うけど、そうなのです。
予告編をどうぞ
この予告編、
映画を観る前と観た後ではまったく意味がちがうというか、
エピソードがてんこもりというか。
実はパンフレット買わなかったので、
それぞれの生徒役の名前も俳優さんもわからないという。
公式サイトにスタッフやキャラクターに関するデータがないんですよ。
わ、どうしよう、と思いました。
でも、何を言ってもネタバレにならざるを得ないような、
そんな気もするので、
外枠の、どういう映画なのか、
なんでそんなに今、《桐島》ブームが来ているのかだけ、
私が1回観た感想なんて、ろくでもないわけですけど、書き散らします^^
っていうほど、書けませんけれども。
とある《金曜日》、
バレー部のキャプテンであり、成績優秀であり、
学校1の美女と付き合っている桐島が、
部活をやめる、と先生に言ったらしい。
顧問の女の先生が職員室で号泣。
桐島って生徒はなんか大きな選抜チームにも抜擢されるくらいの、
エース中のエースなわけでして
まず、バレー部がパニックになるわけです。
そしてそのパニックはもちろん、何も知らなかった彼女や、
桐島の親友たち、親友の彼女や女子グループ、
桐島の親友たちの彼女とか片思いされている女子とか、
いろいろに広がってゆき、
桐島から一番遠い存在であるはずの映画部まで巻き込んでゆくという・・・・
主人公の映画部・部長の神木龍之介くんと、
吹奏楽部部長の大後寿々花ちゃんくらいしか、
役者さんの名前は知らないんですけれど、
でも、役者さんたちは同じ地平線上に並んでいるというか、
見事に群像劇なわけなんです。
主人公ひとりがぐいぐい引っ張ってゆく作品ではなくて、
生徒達ひとりひとりが等分に描かれると言うか。
でも生徒たちは見事なまでの学校という格差社会のなかに生きているわけなんですが。
桐島が部活をやめる、と言ったらしい《金曜日》、
これがそれぞれの生徒たちにとってどういう1日であったか、
冒頭、繰り返し、それぞれの生徒を軸に語られるわけですけれども、
そのなかでエピソードが語られてゆくたびに、
その格差が瞭然としてくるわけです。
生徒達が日々、人間関係をそつなくこなすために、
どれほど注意深く生きていくのか。
感情の揺れを封殺しているのか。
息がつまりそうな日常のなかで、
映画部部長の前田がいいんです。
彼もまた、自分を主張することを我慢して、
もう我慢になれきっちゃった、
それが常態になっちゃったような男の子なんですけど、
ふとした出来事にこころが淡く揺れたりする、
その感情の揺れを演じて、神木くんが素晴らしいです。
ある生徒に片思いする吹奏楽部の部長大後さんと、
喧嘩?する場面であるとか、
桐島がやめたあと、バレー部で起こるしごきとか、
学生ならではの熱い想いが出ていて妬ましいくらいです。
それぞれの生徒がいっぱいいっぱいの状況のなかで、
必死に生きている感じがあって、
事件と言えば、《桐島が部活をやめる》ってことしか
起こらないのではあるけれど、
実に繊細に感情が揺れるさまを描いて秀逸。
「アベンジャーズ」のCMで、《日本人よこれが映画だ》みたいな
セリフであったのにたいして、
「桐島・・」のCMでは、《ハリウッドよこれが映画だ》みたいな
リアクションを起こしたらしいですけども(笑)、
この映画はやっぱり日本であるからこそ生まれ、
そして日本人でなければわからない映画なのではないかと思ったりもします。
生徒ひとりひとりが等分に語られるというけれど、
映画を観た後、やはり主人公は映画部の部長・前田だなあという納得。
ラストに待ち受ける、屋上でのカタルシスと、
恵まれているように見える生徒でもしんどい日常を生きているせつなさが、
不意打ちに涙させてしまったりします。
不覚でしたけど、つつつーと目じりに涙が^^
吉田大八監督は映画の撮影に入る前に、
生徒役の役者さんたちを集めて、
ワークショップを行ったそうです。
そこで役を決めていったんだとか。びっくりしますね。
そして、振り当てられた役について、
どういうひとか、役者さんたちに書かせたそうですよ。
内容もさることながら、
どんな文字を書くか、どんな紙に書くか、
どれくらいの分量でかくのか、
そういうのが面白かったと、監督が言われてましたけど、
《やば。そういうところを観られるのか》と、びびりました。
監督、侮れませんね。
主題歌は高橋優さんが歌われているのですが、
映画を観る前は、がなっててちょっとしんどいなあと思ったのに、
エンドロールで流れると、しみじみ、聴き入ってしまう名曲でした。
《ぼくたちはこの世界で生きていかなきゃならないんだ》だったかな。
部長が書いた脚本でのせりふ。
それがこの映画のコアだなあと思ったのでした。
とても素晴らしい、まさに日本人による日本人のための映画、です。
ぜひ、ご覧になってください。
あ、そうだ、
誰かが言ってたけど、
映画を観たら、脚本とか、原作が読みたくなるって。
実に。
今読んでいる、桐野夏生さんの、これもしんどい「玉蘭」、
読み終わったら、
朝井リョウさんの原作を読もうと思います、わくわく。
(追記)
映画部の部室に、部長がはいってゆくと、
部員達が話していました。
そこで、
「もうGANTZ32巻読んだ?」(買った?かも)
というセリフが!
おおお、佐藤P、
GANTZを出してくれてありがとう!と感動しました。
もちろん、佐藤Pには感謝の意を伝えました(笑)