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ネットの海に漂う《想い》

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ネットの海に漂う《想い》


1週間ほど前の話になるのだけれど、
すこしある本について、調べたいことがあって、ネットを検索した。
その本のなかの登場人物について、とても論理的で、
なるほどと思う意見がブログには書いてあった。
その記事が2005年か2006年に書かれたものだったので、
わー、歴史のあるブログなんだなあと思って、
ちょこっとほかのページを覗いてみたら、
その方が体調不良から乳がんであることがわかったと書いてあった。

まだ4歳と1歳のお子さんのお母さんで30代半ば。
口数の多くないだんな様の衝撃も自分が受け止めないといけないと、
必死にこらえておられる様子がブログから伝わってきた。
その女性のご両親と家族に支えられて、
子どもふたりともうひとりの子どものように、
だんな様のことも愛そうとするその女性の日々が綴られていった。

ブログを閉じようと思ったけれども、
いつか子どもたちが母を知る手がかりとするならば、と
まだうんと幼い子どもたちのために、
しんどいからだを押して想いと生活を書いてゆかれるのだ。

幼稚園への送り迎えはとうにままならなくなり、
参観も車椅子を使わなければならないので、
幼稚園に病気のことを告げて協力を仰ごうとなさる姿、
5歳にならないと記憶は定着しないそうだからと、
下の子が5歳になるまで生きていたいという願いが胸をうつ。

同病のひとが読者におられるようで、
彼女とのやりとりだけ、素直になれて嬉しいと語られていた。

そのブログが、
2010年にとまってしまって、そのままなのだ。
コメント欄にはエロスパムのコメントがあふれている。
それを見たとき、言葉にならない思いでいっぱいになってしまった。
ご家族は彼女のブログを知らないのだろう。
そんなエロスパムにまじって、コメントがひとつだけあった。
彼女に届きますように、というコメントが悲しくて、たまらなかった。
彼女の闘病生活がつらいものになったとはいえ、
ただ、ブログが放置されているだけなのだと想いたい。
いつか、彼女が次の記事を更新してくれますように。と、
祈ることしかできない。

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ネットには無数の情報があふれている。
ブログ、ツイッター、mixiやfacebookなど、
その形態は流行り廃りがあって、
ブログは過去の形態になりつつある気がする。
ほんの2,3年前までは、どのブログに行っても、
コメント欄で管理人と読者たちが楽しく語らっていたものだけれど。

松山ケンイチファンサイトも馴染みのあるブログが
いくつ休止、終わってしまったことだろう。
会話も成立しづらくなってしまった。
だからそれを憂いに思うということではない。
去年、あんなに大きな震災と原発事故があって、
世界観や人生観や、暮らしが大きく変わって、
ひとはネットで情報を拾っても発信していくほどの価値や、
時間をかける意味を見出しにくくなったのだろうし、
事実、私もその余裕が乏しくなってしまっている。

だから、今、何かを訴えたいとかどうだったらいいのに、とは思わないが、
ネットにはやっぱり、いのちが息づいているのだということ、
また、かつてのいのちが、無数に点在しているのかもしれないということを
書き記しておきたくなったのだ。
もうぜったいに言葉をかわすことができない場所があるということ、
だけど、やっぱり永遠なのだということ、
書く読むことに、大切な意味を見出したいと思っている私は、
自分が書くことに意味があるのかどうかはわからないけれど、
ネットでの個人の場所に敬意を払いつづけたいと思うのだ。






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