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【日本のいちばん長い日】今年の8月は違う、と思う。

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【日本のいちばん長い日】
    今年の8月は違う、と思う。


日本のいちばん長い日 予告篇95秒



終戦前のことが【日本のいちばん長い日】という映画に描かれているというのは、

ずっと前から知っていました。 でも観なかった。

今回、なんで観ようと思ったのか。

それは、やっぱり戦争になってほしくないから、

戦争を終わらせるためにどういうことがあったのか、を知りたくなったのです。

衆議院で戦争法案!が強行採決された後だし、

夫から見に行こうと、誘われていたのもあって。

勇気ふりしぼりました。偶然、8月15日に見ることになって。

劇場は満員でした!



怖くて、観たくない場面も出てくるんだろうなあと、思っていたら、

やっぱり出てきて、

観ながら「あー、もう、勘弁してよ」と思って、足元見てました。直視できなかった。

ご覧になった方はどの場面をさすのか、おわかりになると思いますが。


映画では出てくるひとたちの過酷な局面を生きる姿に感動したし、悲しくもありました。

もっともそれが強烈だったのは、本木雅弘さんが演じておられた昭和天皇。

彼はずっと静かに悲しみをたたえていた、という印象でした。

そして、自らが吹き込んだ玉音放送がラジオで流れるのを聞かれているとき、

その、万感あふれるだろう瞬間も、悲しみにみちていて、

その悲しみは激烈な感情を伴ったものではなくて、

ひたひたと満ちてきた水がコップに一杯になった状態、みたいに思いました。

みんな、それぞれの思いの中で天皇の玉音放送を待つわけですけど、

陸軍があんなに猛々しくふたつに割れていったのだということを、

映画を観て初めて知って、ショックでした。

東條英機陸軍大将が天皇に厳しく反論される場面があって、

それは強烈でした。

降伏して軍隊を除かれてしまった日本は殻をなくしてしまったサザエと同じだ、

そんなものは捨てられるだろう、と東條が進言すると、

天皇は「チャーチルもスターリンもサザエは殻ごと捨てる!」とのたまう。

軍隊のことしか考えていない東條を諌めるような気迫でした。


戦争末期に再び総理大臣を引き受けた鈴木貫太郎。

彼は2・26事件の時に青年将校たちの狙撃を受け、奇跡的に一命を取り留めた方です。

そのときには奥様がその手を傷口にあてて、止血したと新聞で読みました。

その方が天皇から請われて総理になる場面、

そして、息子が官僚をやめて鈴木総理の秘書になる場面は感動的でした。

できるだけ感情の波を抑えて理知的に描かれているのでさらにこちらがその感情を読み取ろうとするのでしょうね。

そして、鈴木総理の家庭、

陸軍大臣の阿南の家庭の日常などが描かれていて、

戦争が前線銃後の男たちだけが関わったものではない、というのがあらためてリアルに感じられました。

そして、その頃の国民の、個の感情を犠牲にしても国を思うこころの美しさが素晴らしかった。

いえ、戦争を翼賛しているわけではけっしてなく、激動の時代を生きたひとたちの知性に感服したのです。


陸軍のなかの血気盛んな、本土総決戦を願う畑中陸軍少佐、松坂桃李さんがぶれのない演技をされていて、

玉音放送の前に国民に檄を飛ばそうと放送局に乗り込み、

電源を切られたマイクの前で檄文を読み上げる場面では、胸が苦しくなりました。

史実に基づく作品だということですよね、

どの時代でも国民が知りえない動きがあるんだなあと思いました。


阿南大臣は一身に責任を背負われて、壮絶でしたけど、夫人は自分の個人的な感情を殺して、見事でしたね。

平成の女性にはあんなまねはできないだろうと思いました。

それは軍国主義下にずっとあった日本で育った、良妻賢母の典型、その究極の姿なのだろうから、

悲しい姿でもあるとはわかっているのですが。


小さなエピソードでしたけど、

宮内庁職員が反乱兵士たちのなかを皇居に行くときに、いのちがけで、

「行くと言ったほうがいいのか戻ると言ったほうがいいのか」と

「そういう言葉の問題なんですかね」と相談しつつ、

「戻ります」と言って、中に入れてもらった後、

「やっぱり言葉の問題だったんですね」とほっとするのでした。


そのときには気づかなかったのですけど、

「玉音放送の言葉」を決める時、円卓であんなにもめたり時間を費やしたりしたのは、

いくら天皇が発する言葉とはいえ、

国民を激高させたり、不満に思わせたりしないで、従順させるための、

日本のためのいのちがけの取捨選択であったのだなあと思ったのでした。

軍隊は最後は武力を行使するのか、引くのか、の選択であり、

政治によるそれは、言葉であるのだ、とあらためて思い知りました。



これは映画の外の話になるのですけど、

責任の取り方としての切腹は、先の戦争の終結とともに終わったのでしょうか。

三島由紀夫の市谷駐屯地乱入のときの切腹がかつてありましたけど、あれは例外として。

次の戦争はない!ので、そういう自殺も起こりえないと思いたいです。




鈴木貫太郎を演じた山崎努さんは見事でした。

そして阿南陸軍大臣を演じた役所広司さんも、もちろん昭和天皇を演じた本木雅弘さんも。

観終わったあと、悲しくてしんどい思いでしたけど、観るべき映画を観たと思いました。

そして、まったく知らないこの戦争のことを勉強しなければ、と思いました。





支離滅裂に書いてしまいましたが、追記することがあれば、また書きます。


あ、最後に、松山ケンイチさんが、陸軍大尉・佐々木武雄役で出てらしたけど、

ほんの何十秒かでした^^

パンフレットによれば、小樽市出身、大川周明に傾倒、行動右翼として横浜では知られた存在、とありました。

放送局に火をつけて燃やしてしまえ、というようなセリフがあるんですけど、

不思議なことに、劇場内が和んだんですよ。突拍子もない発言だったからかなあ。

私もくすっとなっちゃいました、実は。


それから、軍隊の敬礼。顔をあげたまま、からだを深く折るんですね。あれ、びっくりしました!

どうでもいいことですみません。





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