名前を忘れる
こうも長く生きてくると、
うん十年前の学生時代の友だちどころか、
記憶としてはすぐまぢかの、
大人になってからの友だちの名前すら忘れている。
職場の友だちの旧姓と今の名前は思い出せるか、
あ、それは大丈夫だ、
だけど、
趣味で知り合った人たちの名前が思い出せない。
たまーにしか、出来事すら思い出さなくなったからかな。
あの頃は終電を気にしながら、
映画や小説や世相のことを話したものだったのに。
激論かわしたこともあったのに。
顔は覚えている、
でもその顔もいつか、思い出せなくなるのかな。
消えていってしまうのかな。
日記を書くのがいやだった。
日記を書くと、思い出したくないことまで、
どんどんわいてでてきて、
過去にならないような気がした。
いつまでも自分の身の回りにまとわりつく気がした。
だけど、こんなに名前を忘れるので、
日々、書き留めておいたほうがよかったのか、と
一瞬、思ったりする。
思ったりするのだけれども、
送信メールも随時消去していく私の性格上、
そんなものは適宜、破り捨ててきただろうなあと
苦笑いするしかない。
誰かに意地悪をされたとか、
大きな失敗をしたとか、
そんなことより、
実際はお世話になった、
ご恩をうけた、
そっちの方が忘れないでいるべきこと。
だよなあ。
名前を忘れても、あの顔のひとに、
あんなに優しくしてもらった、
そういうことを忘れずにいたいのだけれども。
忘れずにいよう。
忘れないぞ。
という今朝の気持ち。